障害者雇用促進法の変遷と聴覚障害者の雇用環境について 〜聞こえる人の雇用状況と比較〜

僕

妻(ろう者)は大学を卒業してから働いているけど、聴覚障害者の雇用って聞こえる人と比べるとどうなんだろう?

これは最近僕が考えていた漠然としたこと

妻の仕事の話をしていくうちに、働き方や就活について興味を持つようになりました

これでも会社では総務人事で働いていて、障害者雇用についても多少なりとも携わっていますが、会社に入ってくるまでのことについてはよく分かっていない

良い機会なので障害者雇用について調べていくとなかなか奥が深い

今回は障害者、聴覚障害者の雇用環境について、僕が興味を持ったことをまとめていきます

この記事でわかること
  • 障害者雇用促進法の超概要、変遷
  • 数値で見る、障害者雇用の実態
  • その中でも特に聴覚障害を持っている人の雇用状況について
  • 聞こえる人と聞こえない人の雇用環境比較

このブログは聞こえない妻(リヨン)と聞こえる夫(ナンゴー)が運用しています

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国は障害者雇用の促進を進めている

画像引用元:ACphoto

障害者の雇用を推し進めている法律は「障害者雇用促進法」と「障害者総合支援法」があります

「障害者雇用促進法」障害のある人の職業の安定を実現するための具体的な方策を定めた法律、「障害者総合支援法」は障害のある人への支援を定めた法律です

障害者総合支援法も奥が深いのですが、本記事では「障害者雇用促進法」にスポットを当ててまとめます

障害者雇用促進法の変遷

障害者雇用促進法の前身となる法律は「身体障害者雇用促進法」で1960年に制定されました

「身体障害者雇用促進法」のポイントは3つ

  • 事業主が雇用すべき障害者の最低法定雇用率(1.5%)が定められる
  • ただし、あくまで努力目標であり、目標を割り込んでも罰則等はない
  • 「身体」の文字が入っている通り、対象は身体障害者のみ

障害者の対象も狭く、雇用率も義務化されていないため、まだまだ法の制約としては甘めです

その後、1976年に努力義務から達成すべき義務へと変わり、雇用給付金制度が設置されました

雇用給付金制度とは、障がい者の法定雇用率を達成していない企業から納付金を徴収し、それを財源として、障がい者雇用に積極的な企業に調整金や助成金を給付するというものです。

1987年には身体障害者雇用促進法から障害者雇用促進法に改正され「身体」の文字が消えました

その後も細かく改定され、直近では2018年の施行で障害者雇用をさらに促す内容になりました

2018年の主な改正内容
  • 対象の障害に精神障害が加わる
    ※知的障害は1997年から対象済み
  • 民間企業の最低法定雇用率が2.2%(2018年4月1日以降)から2.3%に増加(2021年3月までに)
    ※国・地方公共団体は2.5%から2.6%、都道府県などの教育委員会は2.4%から2.5%
  • 対象となる民間企業の従業員数が45.5人以上(2018年4月1日以降)から43.5人以上(2021年3月までに)へ

最低法定雇用率が上昇しているのは、対象となる障害者の範囲が広がった背景があり、今後も段階的に増加することが想定されます

ちなみに、ここで定義している「対象の障害者」は障害者手帳を持っている方となります

障害者雇用者数は増加傾向

実際に障害者雇用は促されているのでしょうか

独立行政法人 労働政策研究・研修機構にわかりやすいグラフがありましたので引用します

画像引用元:独立行政法人 労働政策研究・研修機構

こちらのグラフから、雇用されている障害者数は増加傾向にあるのがわかります

一方で、法定雇用率を達成している企業の割合は50%前後を推移しており遵守できていない企業はまだまだ多いことが伺えます

聴覚障害者の雇用状況

画像引用元:ACphoto

前章では障害者全体の雇用状況について調べてみましたが、聴覚障害はどうでしょうか

三菱UFJリサーチ&コンサルティングのレポートがわかりやすくまとめていましたので、こちらを参考にします

レポートは2019年のものですが、使用しているデータは主に2016年のものを使用しているため少し古いのは注意が必要です

60歳未満の雇用状況は聴覚障害者と総人口比較でほぼ同等

グラフは年齢階層別の聴覚・言語障害者の雇用割合、日本総人口に占める雇用者割合を表しています

画像引用元:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

グラフでは読み取れませんが、20歳〜69歳までの聴覚・言語障害者数が9.7万人に対して、雇用者数は3.8万人(雇用者割合39.6%)

同年齢階層の日本人口が8,052万人に占める雇用者は5,455万人(雇用者割合67.7%)

全年齢階層の雇用者割合の比較では言語・聴覚障害者の雇用は低いです

しかし、50〜59歳の雇用割合の差は10%、20〜39歳の年齢層では言語・聴覚障害者の割合が4.6%上回っており、60歳未満の聴覚障害者の雇用状況は比較的良いと言えそうです

(ちなみに)言語・聴覚障害者の雇用状況、給与条件が聞こえる人と同様になったら・・・

同レポートでは、仮に言語・聴覚障害者の雇用状況、給与条件を聞こえる人と同様にした場合の財政効果を試算しています

①聴覚障害者の雇用者割合が人口に占める全雇用者の割合と同程度になったら
②聴覚障害者の水銀水準が前雇用者平均の賃金水準と同程度になったら

この二つの仮定が成り立てば、その財政効果は173億円とのこと

画像引用元:三菱UFJリサーチ&コンサルティング
妻

結構大きいんじゃないのかな?!

僕

確かに173億円はすごいけど、国の歳入予算は100兆円クラスで見込んでいるから、全体で見るとそんなに大きくないのかも?

最後に 〜聴覚障害の就労は若いうちに〜

国の方針や社会情勢の後押しもあり、障害者雇用は促進され、聴覚障害者もその恩恵を受けていると言えそうです

ですが、高齢になるほど雇用割合が低くなり、聞こえる人よりその傾向が顕著です

これは過去の障害者雇用の状況が悪かったことが、現在の高齢障害者雇用率に影響している可能性もあります

いづれにせよ、聴覚障害を持つ方は特に早めに就職をすることが雇用環境としては有利になると言えそうです(聞こえる人にも同じことが言えますが)

コメント

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