
最近は字幕付きの放送増えた気がするね〜

確かにね!
つい最近までCMは字幕なんてなかったのに
僕は妻と付き合い始めてから、テレビを字幕付きで見るようになりました
番組のほとんどは字幕に対応しているものの、CMになると字幕はありませんでした
面白いCMもあるのに、一緒に共有できないのが残念だなぁと思っていました
ところが、最近になって徐々に字幕付きCMが増えてきました
調べてみると興味深い内容でしたので、こちらにまとめます
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初めてのテレビ字幕放送は「おしん」
CMの話の前に番組の字幕放送について触れておきます
初の字幕放送は1983年 NHK連続テレビ小説「おしん」でした

それまでも字幕放送の要望はありましたが、なかなか実現に及ばず
原因は「字幕は聴者にとって目障り」という風潮だったからです
今ではこのように感じる人は少なくなったと思いますが、時代を感じます
その後も字幕放送の普及スピードは遅い
連続テレビ小説を皮切りに字幕放送が普及、という訳でもなかったようです
原因は家庭で字幕を映すための機材を用意する必要があり、それが高額だったからです
今のテレビは標準で字幕放送のON/OFFができますが、当時はそのような機能を持つテレビはなく、字幕デコーダーという専用の機器が必要でした
そちらの価格は148,000円で、当時の大学初任給とほぼ同じだったとのことです

画像引用元:長野県聴覚障がい者情報センター
その影響もあってか、字幕放送対応の番組も1993年時点でNHKで10本、民法で数本とわずかでした

小学校の頃は朝ドラくらいしか字幕放送してなかったから、朝ドラばっかり見てたよ
字幕放送が普及したのは2000年のデジタル放送がきっかけです
字幕放送受信機内蔵型テレビが販売されるようになり、字幕放送は気軽に使用できる機能になりました
字幕付きCMは課題が多く実現難しい 3つの要因

日本で初めてCMに字幕がついたのはTBS系列放送でパナソニックのCMとのこと
デジタル放送が始まって10年経過してようやく初めての放送です
また、現在テレビ番組の99.8%以上が字幕に対応するようになりましたが(2018年 総務省調べ)、字幕付きCMは1.02%(2021年 字幕付きCM普及推進協議会調べ)に留まっています
字幕付きCMのハードルはなぜこんなにも高いのでしょうか
主に3つの要因がありました
字幕付きCMの3つの課題
- CMに字幕をつける目的がわからない、発想がない(広告主目線)
- 字幕付きCMに係るテレビ業界の風潮(テレビ局目線)
- CMに字幕を入れる技術が周知されていない(広告制作会社目線)
それぞれもう少し詳しく書きます
原因① CMに字幕をつける目的がわからない、発想がない(広告主目線)
字幕はないよりあった方が良いかもしれませんが、広告主にとってはメリットがなければ字幕付きCMを作成しようとはなりません
また、そもそもCMに字幕を付けるという考え自体がない広告主も多いと思います
広告主からすれば、字幕付きを必要とする人はどれくらいいて、対象の人たちは字幕付きCMにすることで購買意欲が上がるのか、興味を持つのかが重要です
原因② 字幕付きCMに係るテレビ業界の風潮(テレビ局目線)
字幕付きCMと字幕無しCMが混在すると「字幕無しの広告主は社会的に遅れている」等の指摘が入る可能性を懸念する風潮があったようです
テレビ局の主な収入源はCMなので、広告主に不平等が生じることについては消極的にならざるを得ない事情だったんですね
また、テレビ番組とCMの放送信号が異なることによる技術的な懸念も
この信号を切り替えるタイミングでCMの字幕とテレビ番組の字幕が重なってしまう可能性がありました
実際にはそのようなことが生じる確率はかなり低いのですが、業界内ではその現象を恐れる風潮にあったようです
CMに字幕を入れる技術が周知されていない(広告制作会社目線)
これはタイトルの通りですが、広告制作会社内で字幕付きCMを作成する手順が確立されていなかったため、普及が遅れたという側面があります
さまざまな団体が協力し合い、課題をクリアにしていく

CMに字幕をつける意義はあるのか
2006年 国際ユニバーサルデザイン協議会により、CMに字幕をつけようとする活動が始まりました
CM字幕プロジェクト「テレビCMにも字幕を」です
放送局、企業、生活者へのヒアリングやアンケート、情報交換会を通じテレビCMの必要性、需要についてまとめています
2007年のアンケート結果では聴覚障害者の4人のうち3人がCMにも字幕が欲しい、聴者でも半数がCMに字幕が欲しいという結果が出ました
データは2007年当初より少し新しいものになってしまいますが、聴覚障害者数は次のとおり
・聴覚障害者の数は約34万1千人(2018年 厚生労働省調べ)
・難聴を自覚している人は約3,400万人(2016年 総務省調べ)
また聴者でも、家に赤ちゃんがいる、受験生がいる、リモート会議をする等の理由でテレビをミュートにする必要があるけどテレビを付けたい状況もあり、字幕付きCMの需要、必要性が明らかになりました
そして、国際ユニバーサルデザイン協議会の活動もあり先述した日本初の字幕付きCMが2010年に放映されました
字幕付きCM普及推進協議会設立により、テレビCM普及に向けての活動盛んに
2014年にはCMに関する3団体が、字幕付きCM普及のため「字幕付きCM普及推進協議会」を設立しました
【構成団体】
・公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会(JAA) リンク
・一般社団法人 日本民間放送連盟(民放連) リンク
・一般社団法人 日本広告業協会(JAAA) リンク
広告主(JAA)、テレビ局(民放連)、広告制作(JAAA)の3団体が共同し、字幕付きCMの実現への取り組みが本格化します
JAA 字幕被り、悪目立ちについて「問題にしない」
日本アドバタイザーズ協会(JAA)企業間で字幕付き放送時に起こりうる「字幕被り」字幕有る無しCMが混在することによる「悪目立ち」について問題にしないと申し合わせをしました
この発表により字幕付きCMが放送しやすくなりました
字幕付きCM技術の普及
こちらは日本広告業協会(JAAA)から2019年に「字幕付きCMハンドブック」を発行し、制作に必要な機材、工程をまとめられました
また、字幕付きCMを作成するには通常より複雑な工程を要しましたが、ここも簡素化して技術的な壁を無くそうとしています
字幕付きCM普及推進に向けたロードマップ公表
これらの活動を経て、字幕付きCM普及推進協議会より、2020年9月18日に「字幕付きCM普及推進に向けたロードマップ」が公表されました

ちなみにこちらが2021年7月の改訂版ロードマップ

2021年4月には主要テレビ局で字幕付きCMに対応済みとなっています
2022年には全国のテレビ局で字幕付きCMが対応予定ですね
字幕付きCMの広報活動
2021年5月にはyoutubeにて「字幕CM協会チャンネル」より字幕付きCMに関係する5本の動画がアップされました
タイトルは「字幕付きCM5つのお話」です

個人的には第1話と第5話が興味深かったです
第5話は字幕付きCMルールについて「へ〜」って思える内容が多いです
少し難しい話もありますが、字幕付きCM普及に向けて、各団体の活動がわかるので興味がある方はご覧ください
終わりに 〜最後の課題は広告主の理解か〜

ここまで色々な活動が行われているけど、まだまだ字幕付きCMが少ないのはなんでだろう?

字幕付きCMを制作する広告主がまだまだ少ないことが原因だね
2021年の調べでは字幕付きCMを提供している広告主は71社
増えてはきているけど、多いとは言い切れない数字だと思います
昨今はSDGsが流行し、その目標の中でも「人や国の不平等をなくそう」が掲げられています

SDGsに積極的に参画する会社は増えてますので、字幕付きCMにも理解ある企業が増えると良いですね
コメント
とても柔らかい雰囲気で親しみやすいブログなのに、シリアスで、大切な問題を丁寧に取り上げていただいてますね!夫婦でのコメントも素敵です!多くの人に読んでもらえそうで、当事者としては、大変ありがたいです。是非とも今後も続けて、発信し続けて欲しいです。
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伊藤芳浩 様
コメントありがとうございます
当事者の方にも興味を持っていただき、大変励みになります
また応援ありがとうございます
趣味の範囲ですが、今後も役立つ情報や思うことを書いていきます^^